狼と暮らす

メルツィヒ・ザールのマリーナに到着した時、ハーフェンビューロ(ハーバー事務所)はお昼休みでマイスターが不在だった。
船に戻り、いつものように到着を祝う乾杯のビールと昼食をとりながらマイスターの帰りを待つ。

そして午後の業務開始と同時に冬季保管の交渉を始め、ついに成立。
この瞬間、Sigridur号の今回の旅は終了を告げたのだった。


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【モーゼル川201.2キロメートル、ザール川44.8キロメートル ロックは13か所】

そしてそれは次のステージ、すなわち越冬準備の作業が始まることを意味していた。
Mさんによると、準備作業は50項目ほどあり、上架する前に2日、上架後に2日程度要するらしい。

帰国日までのスケジュールを組み直し、上架する日を8月11日に設定した。それまでにしなければならない仕事は山のようにあるが、私にはその前にどうしても行きたいところがあった。

ここメルツィヒの森の中に世界でただひとりと言われる人物が住んでいる。野生の狼と長年暮らしているという老人だ。いったいどういうことだろう。ムツゴロウ王国の畑正憲みたいなひとなのだろうか。興味をかきたてられる。百聞は一見にしかずだ。この機会を逃すわけにはいかない。


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【Wolfsparkのホームページより拝借】

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【Wolfsparkのホームページより拝借】

もっともMさんにはあまり関心がないようだ。船に残り、装備品の洗い出し・リスト化・数量チェックなど、準備作業の項目をひとつでも減らすほうに専念されることになった。

ここのハーフェンマイスターは巨漢で、一見怖そうな風貌だが私には頼もしい好漢に思えた。なんでも「OK、OK、俺に任せろ」というタイプだ。私はここにいる間、彼を大将と呼んでいた。
大将に頼んで自転車を借り、狼と暮らす老人が住むという森に出かけた。

途中道を尋ねながら自転車で30分ぐらい走って森の中に到着したのだがだれもいない。森はひっそりと静まり返っている。
ゲート前の説明書きが悲しいことによく理解できない。回転式のゲートは自転車が通れるようになっているが、標識には自転車はダメと書いてあるようにもとれる。
入場料は不要のようだ。テーマパークのようなものではないらしい。考えてみれば狼と暮らしているのであって、見世物ではないのだろう。
勝手にゲートを入っていいのだろうか。野生の狼に出くわしたらどうやって身を守ったらいいのだろう。
急に不安になった。
だれか来ないかな。周りを見渡しても人っ子一人いないのである。

しばらく逡巡したあと、意を決して自転車ごと回転ゲートをくぐった。借り物の自転車を置いていくのが心配だったし、なにより狼から身を守るときに自転車があったほうがよかろうと考えたのだ。

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森の中の道をしばらく行くと金網に囲まれたエリアに出た。
なんだ、野生とはいっても狼はちゃんと隔離されているのだな。少し安心する。
さらにいくと、道が分かれていた。方向を変えて進んでいくといきなり大声で呼び止められた。
金網の中で作業をしていた男がなにか言っている。自転車を降りろと言っているようだ。
自転車は押して歩かなければならないのだった。自転車から降りて詫びるのと同時に入口の看板の意味がやっと呑込めた。押しチャリなんだな。

森の奥に進み金網の中に小さな小屋を見つけたがここにも人の気配がない。
しばらく行ったり来たりしたが数家族と出会っただけで結局よくわからないままにこの広すぎる森を退出した。
老人に会うことはできなかったが、途中で白い狼には出会った。昼寝中ではあったが。
まさか注意されたあの男が狼と暮らす老人ではなかろうな。真相はわからないままだ。


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【この小屋に住んでいるのかな。でも誰もいないし】

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【看板があった。この森のどこかに住んでいるのだろう】

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【ところどころに設置された観測小屋に登って狼を探す】

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【やっと見つけたオオカミはお昼寝中だった】

よし、明日からは作業に専念しよう。

≪次へ≫







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