座礁

上流を目指して次の日もライン川を遡上する。

209

できるだけ川岸に寄って航行するのだが座礁が怖い。Sigridur号の喫水は1.3メートルだ。常に水深計をチェックして水深3.5メートルから4メートルあたりを目安に進む。急に浅くなるところもあるので気が抜けない。またいつの間にか川の中側に入り過ぎていて対地速度が1ノット以下に落ちてしまう時もある。岸からどのぐらい離して航行するのがベストなのか、なかなか判断が難しいのである。

川のカーブが近づいてくると、ガイドブックを頼りにクロスポイントで川を横切って反対側に移る。内側を攻めるためだ。そのとき対向船や追越し船に注意を払う。左側通行をしている船舶は操舵室の右側にブルーの電光表示板を掲げているので、どちら側をやり過ごすか判断の参考にする。


208-1

211-1
【右舷にブルーの電光表示板を掲げているのがわかる】

212
【ライン川にかかる橋はどれも大きくて橋げたも高い】

210
【橋脚付近は流れが速いので超えるのに難儀する】

クロスポイントでは私たちはふつうに斜めに横切ったつもりだったのだが、帰国後にグーグルアースでSigridur号の航跡を確認してみると、まるで定規を当てたように直角にライン川を横切っている。思いのほか流れに押されていたのだ。ときには横断を始める時より下流側に押し戻されながら対岸に渡っていたのだった。

214

そして問題は両岸から張り出している「棘」だ。
ガイドブックに載っている「棘」は実際には水面上にはなにもなく、先端付近にポールが立っているだけだ。ただ波の立ち方で浅瀬になっていることがわかり、流れも速いのでそこには近づかないようにしていた。しかしすべての「棘」にポールが立っているわけではなく、私たちは水面を観察しながら潜む危険を見極めなければならなかった。


217
【「棘」は水面下だ。先端に立つポールだけがこのように見えた】

帰国後にグーグルアースで初めて「棘」の正体を見たのだが、護岸のための石積みだったのだ。本来は水面に出ているはずの石積みが、今年はヨーロッパの各地で大雨が起きライン川も水かさが増したために、水面下に沈んでいたのである。
私たちの航海中に限って「棘」はその牙を隠していたのだ。
また、増水によって流れも通常より速くなっていたのだろう。

215

そうとも知らず航海を続けていた私たちはある橋を通過したすぐあとにとうとう「棘」に乗り上げてしまった。
それまでにもじつは何度か軽い座礁を経験していて、いずれも底は砂地であり少し船体を揺すってエンジンをふかせば難なく脱出できたのだが、今回は事情が違った。いきなりガツンと下から突き上げられた。私は真っ先に浸水を心配したが、長距離航海が可能なこの船はさすがに頑丈にできていて、側面ならいざしらずキールに当たるなら多少の衝撃にはビクともしないのであった。

とはいえ黒煙を吹くほどエンジンを回しても船は動かない。
これは困ったことになった。
でもだれも助けてはくれないので自分たちでどうにかするしかない。私はバウに行ったり右舷と左舷を行ったり来たり、Mさんはギアを後進に入れたり前進に入れたり、とにかくできることを繰り返しやっていると、少しずつ船の向きが変わりそれにつれて川の水流を船腹に受けるようになり、やがて流れに押されるようにして離礁したのである。


216
【座礁した地点をグーグルアースで見ると石積み突堤が水面上に見えている!】

水面下の石積みを避けるのに水深計をにらんでいるだけでは決して安全ではない。グーグルアースで航跡を眺めてみると非常にきわどい場所を通過していたケースがいくつもあった。突堤が水面上に見えていれば今回の座礁は起きなかっただろう。「棘」などなにも怖くない。増水していなければ川の流れだってこれほど速くはなかっただろう。私たちはつくづく悪い条件の元でライン川を遡上していたのだった。

213
【その日の泊地にはヨットがたくさん係留されていた】

今日もドラマがあったがなんとか切り抜けた。Sigridur号の強さもよくわかった。困難ではあるがライン川を2日も上ってきたのだ。
まだ先は長い。明日はもっとライン川を楽しもう。


≪次へ≫


スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

HappyHoliday2020

Author:HappyHoliday2020
博多湾の風を感じてください

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード