閃け!騎士に挑むコンピュータ

【閃け!棋士に挑むコンピュータ 田中徹&難波美帆著 梧桐書院】
情報処理学会が人工知能研究の一分野として、コンピュータ将棋の開発を始めてから苦節35年。ようやくトッププロ棋士と互角に戦えるレベルまで到達した。
2010年春、学会は日本将棋連盟に挑戦状を送り、連盟の米長会長は受けて立った。
米長会長が対戦相手として指名したのは女流王将(当時)清水市代である。
かくて、2010年10月11日「女流王将清水市代対コンピュータ将棋あから2010」が東大構内で実現した。
あから2010というのは、この対戦のために構成されたシステムである。強豪といわれる4つの将棋ソフトを169台のコンピュータで並列処理し、出てきた複数の候補の中から「合議(!)」によって指し手を決定するというのである。
本書では、将棋ソフトが進化してきた経緯、ソフト開発にかける科学者・技術者たちの熱意、コンピュータに縁のなかった清水女流王将がこの挑戦を受けるにあたっての心情、勝負の勝敗を分けた原因の解説、そして人工知能の研究が人間社会にもたらすもの、などなどが第1章から第9章まで、わかりやすく読みやすく構成されている。
著者は二人の記者だが、将棋のプロでもコンピュータのプロでもないふたりが、ここまで深く取材し、極めたのかと思うと感服するばかりである。
わくわくしながら一気に読んだ。
お勧め度は ◎
スポンサーサイト