感動の3冊

年末から年始にかけて読んだ3冊の本。どれも感動した。

時を刻む湖
【時を刻む湖 中川毅著 岩波科学ライブラリー】

若狭湾の近くにある湖、水月湖。この湖の名を知る日本人はどれだけいるのだろう。私も本書で初めて知った。
この湖の湖底に堆積した七万年分の地層の縞模様から、世界中の考古学の標準時が決まっているそうだ。なんという不思議。そして、七万年分の縞模様をすべて解析した研究者たちの苦闘。驚きと感動に満ちた本だ。


E=mc2
【戸塚教授の「科学入門」~E=mc2は美しい! 戸塚洋二著 講談社】

惜しい人を亡くしたものだ。本書を読んで改めて思った。梶田さんがノーベル賞を受賞したときに戸塚氏のことを話されたのを聞いて初めて知った物理学者だったが、なるほど彼こそノーベル賞に値するひとだったんだ。
素粒子物理学にはかねてより興味を持っていたので時間を忘れて楽しく読み終えた。微小な世界から宇宙の果てまで、137億年の太古から太陽が燃え尽きる未来まで、時空を縦横無尽に駆け巡る学問だ。面白くないはずがない。


裸でも生きる
【裸でも生きる 山口絵理子著 講談社】

これはすごい人に出会った。見た目はか細い女性だがなんと強いひとだろう。数えきれないほど壁にぶち当たりながら、決して自分の信念を曲げなかった。そのたびに自力でどうにか道を開いてきた。
だれかの真似をするのは易しいが、自分で道を造るのは百倍難しい。口で言うのは易しいが、実行に移すのは百倍努力がいる。まさにパイオニアと呼ぶにふさわしい。
貧困をどうにかしたい、というのが彼女の出発点だが、お情けでなく、商品そのものの価値で勝負したい、というところに神髄がある。勇気をもらった。若い人に勧めたい。


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憲法主義

kenpou
【憲法主義 内山奈月(AKB48)/南野森(九大教授) PHP研究所】

予想をはるかに超える収穫。
国の根幹たる憲法について、憲法学者からAKB48のメンバーが講義を受けるという形式で書かれているわけだが、じつにわかりやすく、すっと理解できる。目からうろこが満載だ。

この本が成功を収めたのは南野教授の講義の進め方が適切だったこともあるだろうが、内山奈月がまれにみる優秀な生徒であったことが最大の要因だろう。読む前にAKB48というだけで値踏みしたことを恥ずかしく、また申し訳なく思う。

安倍晋三は昨年7月1日に集団的自衛権の行使容認について憲法解釈の変更を閣議決定した。本書では、憲法そのものの変更ではなく、解釈の変更により憲法の規定を無力化することの危うさを警告していたが、その危惧が現実になったのだ。
私自身、その時点では問題意識を持っていなかった。本書を読み終えた今はそれが暴挙だとしっかり理解できる。

憲法は、すべての国民が正しく理解すべきものだと強く思った。
良書である。広く読まれることを望む。


海にまつわる本

海を渡った人類
【海を渡った人類の遥かな歴史 ブライアン・フェイガン著/東郷えりか訳 河出書房新社】

 副題の「名もない古代の海洋民はいかに航海したのか」は、ずっと知りたかったテーマだった。とくに第2章から第4章の太平洋への拡散は一番知りたかったところだ。十分な装備もない原始的な船で古代の人々はいったいどうやって大海を渡っていったのだろうかと。
 人類が少しずつ認知する領域を広げていく過程は感動的である。未知の世界に挑む精神は太古の昔から存在していたのだ。
 けっして読みやすい本とはいえないが、魅力的なテーマに惹かれて読み進めた。


エリュトゥラー海案内記
【エリュトゥラー海案内記 村川堅太郎訳註 中公文庫】

 「エリュトゥラー海案内記」は「海を渡った人類の遥かな歴史」に頻繁に出てくる考察・検証の原資料のひとつである。その解説本が中公文庫から再版されていることを知り、引き続き読み解いてみた。
 エリュトラー海とは紅海のことで、エジプトからインドにいたる海域を対象に1世紀ごろの海上交易の様子が事細かに記されている。積み荷の種類はどうでもよかったが、どこそこには何日で行けるとか、どの港の手前には浅瀬があるとかいう情報は読んでおもしろかった。世界地図を広げグーグルアースを見ながら案内記に沿って紅海周辺の港の名前を一つ一つ確認していくのは楽しい作業だった。


海の武士団
【海の武士団 黒嶋敏著 講談社選書メチエ】

 著者は、日本の中世の海で影響力を持った集団のことを「海賊」とか「水軍」とか「海の武士団」などと呼ぶことはその実態を表していなくて不適切であるという。彼らを<海の勢力>と独自に名付けてその興隆衰退を論じた本である。大学の講義をもとにしているそうで、論文のような緻密さ・厳格さが背景にあってうならされる。
 しかしながら、ではなぜ書名は「海の武士団」なのか?大いなる自己矛盾ではないのか?
 私の素朴な疑問には最後まで答えがなかった。


ヴァスコダガマの聖戦
【ヴァスコ・ダ・ガマの「聖戦」 ナイジェル・クリフ著/山村宣子訳 白水社】

 副題に「宗教対立の潮目を変えた大航海」とあるように、喜望峰を発見してインドへの航路を開拓したヴァスコ・ダ・ガマの単純な航海記ではなく、本書にはこの航海がなされるに至った歴史的な背景、とくに宗教上の対立とこの航海がもたらしたその後の世界史への洞察が含まれている。
 キリスト教世界とイスラム教世界の対立は私たち日本人には理解しきれない部分も多いと思うが、現代でも世界のあちこちで紛争が根強く続いている。そのわけを少しでも知ることは大事なことなのだろう。
 ともあれ、航海記はいつもわくわくさせてくれる。この本も然り。
 しかしながら二段組み全463ページの分厚いこの本は、図書館で借りて2週間で読むにはちょっと苦しい。
 

今年の5冊(続き)

今年の5冊の続き。

ジヴェルニーの食卓 canvas
【『ジヴェルニーの食卓/楽園のカンヴァス』原田マハ著 新潮社】

原田マハ作品を2冊選んだ。
原田マハは私の好きな作家の筆頭である。作品にはずれがない。ほかにも推薦したいものがあるが、やはり残るのは彼女の得意分野をテーマにしたこの2冊になる。



下町ロケット
【『下町ロケット』池井戸潤著 小学館】

分野は異なるが、エンジニアとして生きてきた自分をどうしても重ねて読んでしまう。技術にすべてをかける男たちのドラマが熱く胸を打つ。
「佃品質、佃プライド。」
そうだ、技術屋はけっしてプライドを捨ててはいけないのだ。



天翔る
【『天翔る』村山由佳著 講談社】

エンデュランスという聞きなれない耐久乗馬レースに取り組む少女とその仲間を描いた小説で、知人の勧めで読了。読後感はさわやか。
村山由佳は私のジャンルでないので、私にしては思い切った選定をしてみた。少し著者の評価が変わり印象に残った。


来年もいい本に出会いたい。

今年の5冊

今年読んだ本のなかからよかったと思う5冊を選んでみた。

funeamu
【『舟を編む』三浦しをん著 光文社】

図書館からの借り物ではなく、今年購入した唯一の書籍。
「大渡海」という架空の辞書を編集するひとたちの並々ならぬ苦労を、わりと軽めの文体で描いたこの小説は2012年の本屋大賞を圧倒的な得点で受賞した。本屋大賞は、選ぶのが書店の店員さんという変わり種の賞だが、それゆえに一目置かれている。

私は辞書と地図には特段の思いを持っていて、日頃から手元に適当な辞書や地図がないと落ち着かない性質だ。
『舟を編む』が辞書を作る小説と聞いてただちに図書館にリクエストしたのだが、あまりにも待機者が多くて順番が回ってくるのはいつになるとも知れず、当面は読むのをあきらめていた。が、ここにきて思い立ち、めったにないことだが本屋で購入することにした。

というのも、実家にある『大言海』はいずれ自分が譲り受けるつもりでいたのが、母の希望で知人に渡すことになったからだ。全4巻大部の書は風呂敷包みにくるまれて実家を後にした。むろん、私よりその方が所有するにふさわしいと見抜いたからこその母の決断であり、異論を陳べる理由はなにもない。
しかしこのことがきっかけで、本書をいつまでも待ち続けるのではなく、一刻も早く読みたくなったのだった。

広辞苑第五版の序に「辞典というものは、ことばという存在の海に乗り出す、まことに頼りがいのある舟のようなものであろう」とある。本書の中で荒木は「ひとは辞書という舟に乗り、暗い海面に浮かびあがる小さな光を集める」と語り、自分たちの仕事を「海を渡るにふさわしい舟を編む」と決意した。書名の由来はここにある。

辞書の編纂という地味で根気のいる仕事を表舞台に乗せたこの小説は、文句なく本屋大賞にふさわしいと思う。


紙数の都合で(?)残りは次にまわします。
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